雨の恋〜たった一つの傘〜【短編】
「ねぇ……そう言えば…キミの名前…教えて?」
彼は、ゆっくりあたしの手を引いて人のいないスーパーのはじっこに
連れていかれた。
「あたしの……名前は………っ。」
あたしの唇は、彼の唇によって塞がれた。
「……へへ。今のもう一回していい?」
あたしより大人なのに今のまるで子供みたい…
「…ダメだよ…誰かに見られたら…「大丈夫だって…こういう時に傘を使うんだよ?」
彼は、そう言って一瞬意地悪な笑みを溢して
あたしの唇をまた塞ぐ…
やがて、雨がやんで…
薄暗くなっていた空は、やがて真っ赤な夕日が雲から顔を覗かせた。
その夕日であたし達の影が傘に映っていた…
甘い二人の時間を夕日だけが見ていた。
ねぇ貴方に出会えたのは、きっとこの傘のおかげなのかな?
「ねぇ…!貴方の名前も聞かせてよ!!」
「嫌だ♪」
―END―