どん底女と救世主。



助かった、なんて言えるようになったんだ…。
前はどんなに手の込んだ資料を用意しても、そんなこと言ってくれなかったのに。

課長が丸くなったのか、あるいは自分が課長の考える水準までようやく達したのか。

どっちにしろ何だか感動…。


そんなことを考えて、課長の前に突っ立っていると、


「なんだ?」

「いえ、なにも!」


怪訝そうに眉を寄せて、何もないなら早く席に戻れという無言の圧力を発する課長に、急いで席へと戻る。


せっかくお礼を言われたばかりなのに、変に怒られたら馬鹿らしい。
仕事しよ、仕事。


気合いを入れ直し、再度パソコンに向かおうとすると、新人の中田君が近づいて来た。

なにごとかと思えば、中田君がいま担当している法人への説明資料と見積書作成の依頼だった。


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