どん底女と救世主。
沸騰したお湯は、コーヒーを淹れるには熱すぎるのでコップを温めたあと少し置き、その後はもう雑念を取り払うように無心でお湯を注ぐことに集中する。
粉の入ったフィルターにお湯を小さな円を描くように注いでっと…。
時間をかけて、丁寧に。
そうすれば例えインスタントでも美味しいコーヒーが淹れられる。
テレビでコーヒー好きの芸能人が言っていたことの受け売りだ。
自分の分だけだったら、いつもはこんなに手間はかけないけど。
今日は特別だ。時間もあるし。
少し蒸らしてもう一度お湯を注ぐ。
ああ、いい香り。
湯気とともに香る芳ばしい香りが、乱れかけた心に平静を取り戻し始めた。…気がする。