どん底女と救世主。
淹れたてのコーヒーをこぼさないように慎重に運びきり、ソファに腰を下ろす。
なんとなく気分じゃなくてテレビを点けていない部屋の中はとても静かだ。
ソファが広く感じるのは、そのせいもあるのかもしれない。
最近は、自分の部屋に戻ろうとすると何故か課長に引き留められ、ソファの隣に座り、眠るまでの時間をふたりで過ごすことが多かった。
テレビを無言のまま並んで見たり、課長が本を読んでる隣でスマホをいじっていたり。
あまり会話らしい会話はしないけど、不思議と気まずくはない、むしろ穏やかな時間。
だからかな。今夜は久しぶりにひとりでなんだか寂しい気がするのは。
寂しいなんて…。どうしちゃったんだろう、私。
勝と住んでたときは、むしろひとりの時間を楽しんでいたのに。
自分自身の心境の変化について行けず、未だ湯気を立てるコーヒーに口をつける。
うん、美味しい。やっぱり手間をかけただけあるな。
課長に淹れたら喜んでくれるかな、なんて。
ああ、また課長のことを考えてる。完璧に振り回されてるな、私…。
そもそも、課長がどごまで本気なのか分からないのに。