どん底女と救世主。



『お前に会いたくて帰って来た』

『大人しく俺のものになれ』


うっ…。思い出しただけでも、耳まで熱くなる。

言葉だけ聞くと、甘い甘い愛の言葉にもか聞こえるけど。


そのあとの不敵な笑みとか、課長のいつもの態度とか今までの態度からは、どうも課長の真意が読み切れなくて。


色んな人に裏切られたばかりの私には、人の言葉を素直にそのまま受け止めることなんて、とてもじゃないけど今は出来ない。


大体、課長は私のことどう思ってるんだろう。

私のことが、好き?

いやいやいや、あの課長が私のことなんかを好きなわけが…。

それに肝心の『好きだ』と言う言葉を言われたことはない。


言われたのは、

『俺はお前のことアリだけど』と言う不遜な言葉のみ。


『アリ』って…。どう捉えたらいいんだろう。
『アリ』イコール『好き』だとは考えられい。

やっぱり、からかわれてるだけだよね。


そんなことを悶々と考えていたとき、


ーーーがちゃ。


玄関から鍵が開けられる音が聞こえて思わず、びくりと肩を竦めた。


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