どん底女と救世主。


もしかしなくても、


「まだ起きてたのか」

「お、おかえりなさい…」


課長だ。


「先に寝とけって言ってるだろう」


少し不服そうにそう言いながら上着を脱ぎ始めた課長に、慌てて立ち上がり、上着を受け取ってハンガーに掛ける。

あ、煙草臭い。それにお酒も 。


勝がスーツにこんな匂いを付けて帰ってきたときは、よく消臭スプレーを振りかけてたけど、課長のスーツは上質なものだ。

明らかにブランドで、明らかにオーダーメイド。
クリーニング出した方がいいかな。


そう迷っていると、


「フロに入ってくる」

もう寝とけよ、と念押しした課長はネクタイを緩めながら浴室へと向かっていった。


その背中を見送って、ふと時計を見るともう夜中の1時を回りそうな時間だ。


課長、お疲れ様です。


明日がお休みの日でよかったな。まあ、明日がお休みだからこそこんな時間までかかったのか。

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