どん底女と救世主。


コンビニでプリンを買う課長の姿を想像すると、なんだかミスマッチでにやけてしまう。

私のためにそうしてくれたのかと思うと、胸の奥がほわっと暖かくなって、引いたはずの熱が蘇ってきた。また耳まで赤くなっていくのを感じていると、


「ビール取ってくれ」


リビングの方から聞こえた声に意識を引き戻される。
冷蔵庫の冷気でなんとか赤みを押さえ込み、課長のビールと自分の酎ハイ、プリンを持って課長のもとへと急いだ。


「まだ呑むんですか?」

「まだって…。俺はほとんど呑んでない」


珍しく不貞腐れたように言う課長。
どうやら今日はお酌する側に徹していたらしい。


「付き合え」


そう言って課長は、自分の座っているソファの隣をぽんぽんと叩いて私を呼ぶ。

誘うような瞳と、課長の隣にある自分のために空けられたスペースに引き寄せられるように座った。

さっきとは違い、隣に体温を感じる。

その体温に、ひどく安心している自分がいた。

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