どん底女と救世主。
鬼の独占欲。
今日の課長のお弁当は、チキン南蛮がメインだ。
自分の席から目線だけで様子を伺うと、彼は今日も課長席に座り、綺麗な箸づかいでお弁当を食べてくれている。
チキン南蛮を課長に作ったのは初めてだったから、口に合うか少し不安だったけど、無表情でありながらも箸の止まらない姿にひと安心。
今日の晩ごはんは何にしようかな。
そんなことを考えながら、私も自分のお弁当に箸をつける。
私のお弁当のチキン南蛮にはタルタルソースはかかっていない。
南蛮酢には漬けたけど、さすがにタルタルソースまでかけてしまったら、深山課長のお弁当と酷似し過ぎていて勘ぐられる危険性は大だ。
南蛮酢に漬けたもも肉を一口大に切って、小口ネギをふんだんにのせたから見た目は課長のお弁当とは被っていない。
うん、美味しいな。
タルタルソースがかかってないからチキン南蛮とは到底言えないけれど、これはこれでいける。
ちらりと深山課長を見やれば、課長はスープジャーに入ったお味噌汁をすすっているところだった。