どん底女と救世主。
お弁当の容器を洗いに急いで給湯室へ向かう。
こうやって洗っておくと帰ってからが楽なんだよね。
ついでにコーヒーでも淹れようかな、と思ったけど手を止めた。
いや、やっぱり買おうかな。甘いものが飲みたい。
カップ式自販機のクリームたっぷりなカフェオレ。それが私のお気に入りだ。
でも、3Fミーティング室の前の自販機にしか売ってない。
1課からは、給湯室の方が近いからついコーヒーを淹れちゃって、課内のみんなの分も淹れる羽目になるんだよね。
お目当ての自販機までたどり着き、ボタンを押したとき、
「よう、冴島」
後ろから男の人の声がした。
この声は…。
「矢部君…」
振り返ると、仕立ての良いダークグレーの細身のスーツに身を包んだ長身の男の人が立っていた。