どん底女と救世主。
「ないよ、あるわけないじゃん…」
矢部君はきっと、勝側の話しも、私側の話しも絵理を通して知っているはずの人物。
そんな彼にこんな話しをされて、正直動揺しまくっているけどこの思いだけははっきりしている。
勝と今更やり直す気なんてない。
「でも、あいつはまだ…」
「え?」
ぼそぼそと矢部君が呟いた言葉は耳に届かず聞き直した。
いつも堂々としている矢部君が口籠るなんて珍しい。
「あ、いや、なんでもない」
悪いと頭を掻く矢部君に、なんでそんなことを聞くのかと問いただそうとすると、
「そうだ!今度、俺の部の飲み会来いよ。良い男いっぱいいるぞ」
「え?」
矢部君の顔が『良いことを思いついた!』と言わんばかりのキラキラしたものに変わっていた。
「お前も誰か誘ってさ、男は俺が厳選した良い男達連れて行くからさ」
それってもしや『合コン』とかいう奴じゃ…。