どん底女と救世主。
なんて思っても、私はここに帰るしかないわけで。
重い足と、ボウリング玉でも入ってるんじゃないかと思うくらいに重く感じる買い物袋のせいで若干帰宅時間は遅くはなったけれど。
夕飯と明日の朝食、そしてお弁当分の買い物は、作り置きだってしているからそこまで大荷物になってないはずなのに。
今日は金曜日。いつもなら接待とかが入っている課長は、今日に限ってなんの予定もなく早く帰れると言っていた。
大根の面取りをしながら、もう何度目か分からないため息をつく。
課長もこんな重い気持ちになってたらどうしよう。
身勝手な居候が居るせいで、家に帰るのが面倒くさいと思っていたら…。
ここは課長のおうちなのに。
課長という責任ある立場で、職場ではいつも神経をとがらせている深山課長には家でくらい安らいで欲しい。
それが、どん底に居た私に手を差し伸べてくれた課長に私が出来ることだと思っていたのに。それなのに。
それどころか、こんなに良くしてもらってるのに怒らせてしまった…。
泣きたい気持ちになってきたとき、横でグツグツと音を立てる鍋からふわりと出汁のいい匂いが香ってきて、少し気持ちが和らいだ。