どん底女と救世主。


「すみません、今日のおでん、鶏ガラ出汁で作ってしまいましたっ…!
課長が好きなのは味噌出汁なのに…」


お風呂から上がり、お前も入ってくれば?と優しい言葉をかけてくれた課長。

それなのに、反応もできないままに食い気味で聞く私に余裕なんてなくて。

もはや涙目で、土下座する勢いの私は頭を下げたまま、床を見つめ課長の言葉を待った。


すると、


「いや、味噌も好きだが普通のおでんも好きだ」

と、至極優しげな声が。

その声に恐る恐る頭をあげると、そこには怒っている課長のすがたなんてなくて、むしろ勢いよく謝った私に訝しげにしている。


「いいから用意が済んだなら、風呂入ってこい」


早くしないと先に食べるぞ、と冷蔵庫を開けビールを取りながら言う課長はいつもと変わらない。


あれ、やっぱり課長怒ってない…。
昼間のアレはなんだったの。

考えても答えは見つかりそうにないので取り敢えずお風呂に入ろうかな。

今日はなんだか疲れた。

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