どん底女と救世主。
「とりあえず、私はできるだけ噂否定しとくから。咲も気にしないように。咲のこと知ってる人はちゃんと分かってるから」
「うん…」
「現に私の後輩は、おかしいと思って私にこのこと教えてくれたわけだし」
「うん…」
絵理が励ましてくれるけど、なかなか気分は浮上しない。
話をしつつも、日替わり定食を完食した絵里はそう残し席を立った。
私はそんな絵里にお礼も言えず、味のしなくなった生姜焼きを食べる。
でも、結局食べきれもせずに、早めに営業一課へと戻った。
お昼を過ぎた一課には、何人かの営業マン達が帰ってきている。
この中の一体何人が私のでたらめな噂を知っているんだろう。一体どこまででたらめな噂を信じているんだろう。
なんで、私がこんな目に会わなきゃいけないの。
悔しい。
斜め前のデスクに希ちゃんの姿はない。
きっとまだランチに行っているはずだ。
仲のいい同期と食べているのだろうか。そして、私の話をしているのか。
そう思うと、胸も胃も痛くて。
午後の就業時間が始まるギリギリで帰ってきた希ちゃんを睨みつけるくらいの気の強さが私にあればいいのに。
今はただ、関わりたくなくて話しかけられないよう願うばかりの自分に呆れる。