どん底女と救世主。
寒いこの時期のおでんはやっぱり格別で、小さいとはいえ土鍋いっぱいあったおでんを完食してしまった。
身体の芯からほかほかと温まって満足したあと待っているのはお皿洗い。
お腹いっぱいになった後、本当は動きたくない。お皿洗いって面倒くさい。
同期の矢部夫妻の家では、料理は絵理が、食後のお皿洗いは矢部君がすると決まっているらしく、家事を一切手伝ってくれない勝と住んでるときは本当に羨ましかった。
たしかに勝はハードワークで大変そうだったけど、お皿洗いくらいはと何度思ったことか…。
「どうした?」
「い、いえ」
そんな思い出したくないことを思い出してしまって動きが止まっていたらしい私を、隣で不審そうに見つめる課長は私が泡のついた食器を渡すのを待っている。