どん底女と救世主。
休日のお互いの予定の確認をお皿洗いのこの時間にするのもまた一連の流れだ。
「課長は?」
「俺も明日は特に何もない」
「久しぶりのお休みですね」
先週も先々週も休日出勤だった課長。
よかった、明日はゆっくり出来るんだな。もしかしたら、家で仕事はするかもしれないけど。
そうか、課長も明日お休みなんだ。明日はなにをしようかな。
本当は、新しい部屋を探しに行ったほうがいいんだろうけどな…。
このやり取りの際に不動産めぐりをすると言うと、家事を申しつけられたり、機嫌が悪くなったりと課長はあまりいい顔をしない。
家事をしてくれる人が居なくなると困るのかもしれないけど。
でもなあ。いつまでも甘えて居候を続けるのもダメだよね。
課長には黙って明日行ってみようかな、なんて考えていたとき、
「どこか出掛けるか」
「え?」
驚いて持っていた最後の洗い物であるお茶碗を落としそうになった。
「それで最後か?」
「は、はい」
「早く貸せ」
課長は私の手にあった泡だらけの茶碗を奪うように取ると、さっさとすすいでリビングへと戻ってしまった。
え、今、『どこか出掛けるか?』って聞いた?ふたりで?
それって…。
もうすでにソファに座って雑誌を読み始めてしまった課長に、なんとなくそれ以上聞けなくて。
結局、そわそわしたまま夜を明かした。