どん底女と救世主。

カジュアルで冬っぽいピンクをまぶたにのせると一気に華やかになる。

うん、やっぱり可愛いなこれ。並んで買った甲斐はあった。

あとはチークをはたいてリップを塗ると、ゴールドのラメがたっぷり入った赤グロスを。

よし、完璧だ。


時計を見ると約束の時間まであと5分。なんとか間に合った。


というか、なんでこんな念入りに化粧してるの、私。
ふと、そんな疑問が浮かんで胸がざわつく。でも、答えなんてだしてる時間なんてない。

適当に洋服を見繕っていると、もう時間を過ぎていた。

まずい。

バッグに必要なものを詰め込んでリビングへと飛び出す。


「すみません、お待たせしました」


飛び込んだ先のリビングには、カウンターにもたれかかりコーヒーを優雅に飲む課長の姿が。
なんだか絵になるな。


「準備できたか?」

「はい」

「行くか」


深山課長はそう言うとテーブルに置いてあった鍵と財布を手に取り玄関へと進んで行く。

慌ててその背中を追いかけ部屋を後にした。


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