どん底女と救世主。
暗雲立ち込め始める師走。
「さすがですね」
「やっぱりリサーチ力から半端ないっす」
「目の付け所が違うよ」
週の半ば、朝からいつもとは違う雰囲気で課内が騒つく営業部一課。
「救世主って言うのは伊達じゃないな」
たぬき親父こと法人営業部部長 中川部長まで一課に出向き、ご満悦そうに手を叩いている。
誰がこんな朝っぱらから大絶賛されているのかと言うと、
「俺、深山課長に一生ついて行きます!」
目をキラキラとさせて真面目にそう言う中田くんに対し、やや呆れたような顔をしている我らが深山課長だ。
なんと、昨夜深山課長が新規契約に漕ぎ着けたのだ。
今回深山課長が勝ち取ったのは、ある会社の新規上場記念パーティー。
その会社は医療機器を開発していて、今までは心臓カテーテルが強みだったらしいが、最近は糖尿病患者のインスリン治療が画期的に行える機器を生み出したとか。
それが大ヒットとなり、今年に入って上場企業となったらしい。
しかもいきなり一部上場らしく、かなり大規模なパーティになるみたいだ。