どん底女と救世主。


その猫なで声に自然と眉間にシワが寄っていくのを感じる。


声がした方に顔を上げると、やっぱりそこには課長席へと駆け寄った希ちゃんの姿が。

課長を取り囲んでいた課員たち、そして中川部長までを押しのけるように深山課長の隣に並んだ。


希ちゃんは確かに、こういうときにいつも華を添えてくれる存在ではあるけど…。


でも。

ちょっと距離が近くない?


『飲み会どこでしますー?』と深山課長にぴったりと寄り添うように立つ希ちゃん。


課長を上目遣いで見つめる目になにか心の奥底からざわざわと湧き出すものを感じ、なんだか落ち着かなくなってきた。


そのとき、希ちゃんの右手が課長の腕に触れた。

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