どん底女と救世主。
「あっ…」
目の前には、驚いた課長の顔。
自分でも何が起こったのか、何をしてしまったのか理解をするのに時間がかかった。
どうやら、私を心配して頰に触れようとした課長の手を、私は思い切り払い除けてしまったらしい。
どうしよう…。
どくりと心臓が嫌な音を立て、冷や汗が流れ出す。
謝るべきなのは分かっているのに、謝罪の言葉が出てこない。
あ、ダメだ。すごく嫌な感じがする。
「冴島、どうした?」
すごく心配そうな顔。すごく失礼なことをしたって言うのに怒るわけでもない酷く優しい声色に、余計心がかき乱される。
「なんでも、ないです…」
「なんでもないことないだろう」
課長は不審そうに私を見つめる。
胸の奥からどろどろとしたものが流れ出して、もう止められない。
「課長には、関係ないです…」
ああ、私は何を言ってるんだろう。