どん底女と救世主。
どん底の私。
私、冴島 咲(さえじま さき)は、昨夜家を失った。ついでに2年間付き合った彼氏も。
取り敢えず一晩過ごすために泊まった安いビジネスホテルのベッドは、寝返りを打つたびにスプリングがギシギシと鳴り、全く眠れない。
今何時だろう。
「え、もうこんな時間?」
枕元に置いておいたスマホで確認すると、もう朝の7時だ。
結局一睡も出来なかった。
「うわ、ひどい顔…」
部屋に置いてある鏡台を覗くと、そこに映っていたのはパンパンに浮腫んだ自分の顔。
目なんてほとんど開いてないようなもの。
どうしよう、冷やさないと。冷蔵庫に冷却パックがあったはず。
そう思い、キッチンに向かおうとして気付く。
あ、ここ家じゃなかった。
ああ、面倒臭い。
でも準備しなければ。
今日も仕事だ。