どん底女と救世主。
「まあ今はその後輩との関係の修復を心掛けて」
そう言った仙崎さんに俯いて、はいと返事するしかなかった。
だけど、関係の修復なんてできるの?
そもそも関係を壊したのはどっちだっけ?
「あ、冴島君。」
失礼します、と立ち去ろうとしたその時仙崎さんに呼び止められる。
これ以上なにがあるんだと半ばイラつきながら顔を上げると、
「君、たしか新人の頃深山君の下についてたよね?」
仙崎さんが出した名前が懐かしすぎて一瞬誰のことだか分からなかった。
「え、深山って深山主任のことですか?あの名古屋営業所に行ってる」
私が知ってる深山と言ったらあの人物しか思い浮かばない。
「そうそう、その深山君。明日からここのホテルの営業一課に新しい課長として戻ることになったから」
嬉しそうに言った仙崎さんの言葉に目の前が真っ暗になりかけた。
帰ってくる?あの人が?
私の天敵であるあの鬼上司が?
今、分かった。ここが本当の私のどん底だと。