どん底女と救世主。

嫌でも目に入ってくるのは深山課長の隣にいつのまにか座っている希ちゃんの姿。

さっきも課長から上着を預かってハンガーに掛けていたし、これが私の仕事と言わんばかりに世話を焼いている。


私だって、家では課長から上着を預かってハンガーに掛けるくらいのことはする。

むしろそのスーツをクリーニングに持っていったのは私なのに。

なんて、なに張り合おうとしてるんだろう。

馬鹿だ、私。そんなの、居候として課せられた仕事ってだけなのに。


胸の奥からどんどんとモヤモヤが湧き出してきて、急いでハイボールを流し込む。


「あの話って本当なんですかね?園田さんと深山課長が付き合ってるって」


この卓では唯一女子っぽいファジーネーブルを飲んでいる若槻さんが、そんな希ちゃんの様子を見ながら首をひねった。

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