どん底女と救世主。
「私、あの目上の男の人に媚び売る園田さんの感じ好きじゃないわ」
「園田さんって色んな噂ありますもんね」
若槻さんが『噂』という言葉を口にして、このテーブルの雰囲気が変わった気がした。
噂と言えば、私と希ちゃん、そして勝の噂。
私が希ちゃんから勝を奪ったという根も葉もない噂。
みんなきっと知っている。そして今思い出しているはずだ。
そう思うと居た堪れなくなってきて、目線をテーブルに落としたとき、
「大丈夫。冴島さんのことちゃんと知ってる人はあんな噂信じてないって」
若槻さんがそう言って、その後ろでお姉さん方がうんうんと頷いた。
「私、冴島さんの同期の人からふたりが付き合ってるって聞いてたから。噂してた人達には否定しておいたよ」
「結構その話も広まるの早かったし、園田さんのこと嫌ってる人も多かったからねー。割とすぐ冴島さんのこと悪く言う人居なくなったよね」
そうだったんだ…。てっきり、深山課長帰還で、私たちの話題になんて皆興味が無くなっただけなのかと思ってた。
私のことを分かってくれる人は居る。
それが分かり、胸の奥がぽかぽかと暖かくなっていく。