どん底女と救世主。
鬼と過ちを犯す夜。


「えー、冴島さんもう帰るの?」

「ちょっと飲み過ぎちゃったみたいで」


サービス部門長の一本締めで締めくくられた忘年会は、一応解散の流れとはなったけど一次会で終わるわけもなくて。

みんな二次会に行く気満々だ。


だけど私はなんだかもう飲みたい気分でもなく、明日も仕事組や主婦組に紛れて帰ろうとしていたところ、お姉様方に捕まってしまった。


夜はまだまだこれからでしょ、とまだまだ呑み足りない様子のお姉様方の押しに揺れていると、


「冴島さん帰るなら私も帰ろうかな」


と、後ろからひょこっと出てきた若槻さん。その顔は真っ赤で、あからさまに酔っ払っていた。

あれ、私の記憶が正しければ若槻さん酎ハイを2杯くらいしか飲んでなかった気がするけど。


「うわ、若槻さん大丈夫?若干フラフラしてない?」

「そんなに飲んでたっけ?」


やっぱり私の記憶は間違ってなかったらしく、お姉様方も首を傾げていると、


「私もともと弱くて」


弱いのに楽しくてつい飲んじゃった、とやたら可愛いことを言う若槻さん。

結局、若槻さんに付き添うという名目で無事帰れることになった。

< 213 / 260 >

この作品をシェア

pagetop