どん底女と救世主。
鬼と過ちを犯す夜。
「えー、冴島さんもう帰るの?」
「ちょっと飲み過ぎちゃったみたいで」
サービス部門長の一本締めで締めくくられた忘年会は、一応解散の流れとはなったけど一次会で終わるわけもなくて。
みんな二次会に行く気満々だ。
だけど私はなんだかもう飲みたい気分でもなく、明日も仕事組や主婦組に紛れて帰ろうとしていたところ、お姉様方に捕まってしまった。
夜はまだまだこれからでしょ、とまだまだ呑み足りない様子のお姉様方の押しに揺れていると、
「冴島さん帰るなら私も帰ろうかな」
と、後ろからひょこっと出てきた若槻さん。その顔は真っ赤で、あからさまに酔っ払っていた。
あれ、私の記憶が正しければ若槻さん酎ハイを2杯くらいしか飲んでなかった気がするけど。
「うわ、若槻さん大丈夫?若干フラフラしてない?」
「そんなに飲んでたっけ?」
やっぱり私の記憶は間違ってなかったらしく、お姉様方も首を傾げていると、
「私もともと弱くて」
弱いのに楽しくてつい飲んじゃった、とやたら可愛いことを言う若槻さん。
結局、若槻さんに付き添うという名目で無事帰れることになった。