どん底女と救世主。


「ごめんね、なんだか面倒かけちゃって」

「ううん、私も帰ろうとしてたし。むしろ若槻さんのおかげで抜け出せてよかった」


それならいいんだけど、と若槻さんは未だ赤い顔でにこりと笑った。私が男だったら惚れてたな。


同い年だけど、一応大卒の私と短大卒の若槻さんは同期じゃない。2期先輩だ。

もし若槻さんと同期だったら、絵理を交えてもっと仲が良かったかもな。


「若槻さん、本当に大丈夫?」


たわいもない話をしながらゆっくりと歩いていると、駅まで無事に着いた。のは、よかったんだけど。

若槻さんと私は路線が違うらしく、ここからは若槻さんが一人になってしまう。


「うん、大丈夫。向こうの駅に着いたら彼が迎えに来てくれるって」

「あ、そうなんだ。それならよかった!」


うわ、羨ましいな。

嬉しそうにそう言う若槻さんは幸せそうで。羨ましすぎる。


そんな若槻さんを見送り、私も自分の乗車口へと向かう。


課長、きっと2次会まで行ってるよね。
希ちゃんも、一緒かな…

いやいや、そんなこと私には関係ない。


言い聞かせるように言いながら頭を振っていたそのとき、




「ーーー咲!」




後ろから、誰かに名前を呼ばれ足を止めた。

< 214 / 260 >

この作品をシェア

pagetop