どん底女と救世主。
「ごめんね、なんだか面倒かけちゃって」
「ううん、私も帰ろうとしてたし。むしろ若槻さんのおかげで抜け出せてよかった」
それならいいんだけど、と若槻さんは未だ赤い顔でにこりと笑った。私が男だったら惚れてたな。
同い年だけど、一応大卒の私と短大卒の若槻さんは同期じゃない。2期先輩だ。
もし若槻さんと同期だったら、絵理を交えてもっと仲が良かったかもな。
「若槻さん、本当に大丈夫?」
たわいもない話をしながらゆっくりと歩いていると、駅まで無事に着いた。のは、よかったんだけど。
若槻さんと私は路線が違うらしく、ここからは若槻さんが一人になってしまう。
「うん、大丈夫。向こうの駅に着いたら彼が迎えに来てくれるって」
「あ、そうなんだ。それならよかった!」
うわ、羨ましいな。
嬉しそうにそう言う若槻さんは幸せそうで。羨ましすぎる。
そんな若槻さんを見送り、私も自分の乗車口へと向かう。
課長、きっと2次会まで行ってるよね。
希ちゃんも、一緒かな…
いやいや、そんなこと私には関係ない。
言い聞かせるように言いながら頭を振っていたそのとき、
「ーーー咲!」
後ろから、誰かに名前を呼ばれ足を止めた。