どん底女と救世主。
「深山、課長…」
あれほど、強く握られて離れなかった勝の手が課長の制止であっさり解けた。
「深山課長?え、なんで課長がこんなところに…」
深山課長の突然の登場に勝は驚きを隠せずにぽかんとしている。
私も、いきなり現れた課長に驚いていた。
だけど、私の場合は驚きよりも安堵の方が強くて。
なんでこんなところに、とか色んな疑問もあるはずなのに、一番に感じるのは課長がここにいるという安心感。
強張っていた身体から力が抜けて行くのを感じた。
「彼女、嫌がっているように見えたが」
「深山課長には関係ないでしょう?」
そう言って、もう一度私の腕を取ろうと手を伸ばした勝を制し、課長はそのまま私の腰を引き寄せる。
腰に回された手は大きくて、温かい。
私たちの距離に一層目を見開いた勝が何か言おうと口を開きかけたけど、深山課長の言葉によって制された。
「人のものに気安く触ってくれるな」