どん底女と救世主。
人のものって…
なにを言って、いや、勝を牽制するために言ってくれてるんだよね。
分かってるはずなのに、胸が高鳴ってしまう。
課長を見上げると、勝をじっと見据えていた。その横顔はなんだか気迫があって。
だいぶ間が空いてから、
「え…?!咲と深山課長が?」
と勝が素っ頓狂な声を上げた。
深山課長と私の顔、そして私の腰に添えられている深山課長の手の3点を何度も視線が行き来している。
信じられないらしく、嘘だろ、と小さな声で何度も呟く勝。
そんな勝に更に追い討ちをかけるように、課長が口を開いた。
「その呼び捨ても止めてくれないか?あまり気分が良くない」
涼しい顔で、ネクタイを緩めながら言う課長に思わず顔が熱を帯びるのを感じる。
いや、これは本心じゃなくて勝への牽制だから。勘違いするな、私。
そう自分に言い聞かせていると、課長は勝に留めを刺した。