どん底女と救世主。

「ちなみに、お前がこいつにやったことも全部知ってる」


その一言で一気に青ざめる勝。
ぎくっと音が聞こえそうなくらいに一瞬肩が上がった。


「少しでも悪いと思う気持ちがあるなら、もうこいつに関わるな 」


聞いたことがないくらいに冷たい声でそう言い放ち、私の腰をぐいっと引き寄せると、


「行くぞ」


言葉に詰まってその場に立ち尽くす勝を残して、その場から私の手を取り連れて離れる。


早足でどんどんと向かって行くのは、先程私も目指していた乗降口。


繋がれた手は冷たくて、でも身体はすごく熱い。
課長の手の冷たさに比例して私の体温だけがどんどん上がって行く。


どうして、ここまで来てくれたんですか?

どうして、勝から私を助けてくれたんですか?

この繋がれた手の意味は?


声に出せない疑問がどんどんと積もっていく。

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