どん底女と救世主。


「課長、二次会に行ったんじゃ」


やっと出たこの言葉に課長の反応はない。


「ちょっと、課長っ」


え、無視?
何度呼びかけても課長はうんともすんとも言わない。
それどころか、振り返りもしない。


とうとう無言のまま電車に乗り込んでしまった。

乗り込んだ電車は意外にも混んでいて、自然と課長との距離も近くなる。

なのに、目さえ合わない。というか、顔を見てくれない。


課長、怒ってる?

勝から助けてくれたこと、お礼を言いたいのに。

勝相手にああ言ってくれて、すごく嬉しかった…。

言いたかったことを言ってくれた。課長の言葉で救われたのに。

頑なに視線を合わそうとしない課長に、どんどん声がかけづらくなってきた。


だけど、手はやっぱり繋がれたままで。

この繋がれた手にどんな意味がわからないまま、私の鼓動だけが激しくなっていく。

< 222 / 260 >

この作品をシェア

pagetop