どん底女と救世主。
「課長、二次会に行ったんじゃ」
やっと出たこの言葉に課長の反応はない。
「ちょっと、課長っ」
え、無視?
何度呼びかけても課長はうんともすんとも言わない。
それどころか、振り返りもしない。
とうとう無言のまま電車に乗り込んでしまった。
乗り込んだ電車は意外にも混んでいて、自然と課長との距離も近くなる。
なのに、目さえ合わない。というか、顔を見てくれない。
課長、怒ってる?
勝から助けてくれたこと、お礼を言いたいのに。
勝相手にああ言ってくれて、すごく嬉しかった…。
言いたかったことを言ってくれた。課長の言葉で救われたのに。
頑なに視線を合わそうとしない課長に、どんどん声がかけづらくなってきた。
だけど、手はやっぱり繋がれたままで。
この繋がれた手にどんな意味がわからないまま、私の鼓動だけが激しくなっていく。