どん底女と救世主。


「そんなことな、」

「お前、まだあいつのことが好きなのか?」


そんなことない、そう言おうとしていた。だけど、課長が鋭い声で遮る。


「ちが、」

「また、あいつに泣かされたな」


すっと、近づいて私の前に立った課長は私の頰へ手を伸ばし、もう乾いたはずの涙の跡を撫でた。


課長の触れた箇所が燃えるように熱い。
まるで火傷したかと思うくらい、一瞬で熱を帯びた。


「…あの、課長」


そう口を開いたときだった。


ーードン


右手を掴まれて、気づいたら壁に背中を押し付けられる。

え、なに?!


そう思った瞬間には、唇に熱い感触。

え、あれ、これって…


「ちょっ、課長っ…」

「黙ってろ」


離れたと同時に出た困惑の声は、課長の唇によって遮られた。

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