どん底女と救世主。


「あのさ、」


黙りこくってしまった私に、絵理が遠慮がちに切り出した。


「話を聞いてる限り、深山課長は咲のこと好きなんじゃないかって思うんだけど」

「違う、深山課長が私のこと好きなわけない」

「そうか?勝に啖呵まで切ってくれたんだろ?」

「え、なんで矢部君がそのこと知ってるの?」


昨日の夜の出来事なのに…。


「勝から聞いた。金曜の夜いきなりあいつに呼び出されて、管巻かれて大変だった んだぞ」

「うわ、ごめん」

「まあ、そこは冴島が謝ることじゃねえけどさ。あいつ、反省してたぞ」


反省、してたんだ…。なんだか少しホッとした気分になる。


「司からその話聞いたから咲に電話したのに、咲ったらそれどころじゃないんだもん」

「ごめん…」

「それも咲が謝ることじゃないんだけどさ。とにかく、そこまでしてくれてるんだから、少なからず好意はあると思うんだけど」


今度は絵理の隣で矢部君が、うんうんと頷いた。

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