どん底女と救世主。
希ちゃんの前に立ち塞がった大きな影は、そのまま希ちゃんを押し退けるようにして中へと入って来る。
「それを逆恨みというんじゃないのか?」
「深山課長…なんで」
課長の冷え切った声と、希ちゃんの弱々しい声が資料室に響いた。
「さっき名古屋から帰って来た。悪いか?」
鋭い声色に、室内の温度が下がったかの様に感じる。
「か、ちょう」
やっと出た声も、きっとふたりには届かないくらいか細いもので。
私は身体の力が抜けて、その場にへたり込んだ。
また、来てくれたんですか…?
この人は、何度私のピンチを、どん底にいる私を救ってくれるんだろう。