どん底女と救世主。
「すみ、ません…」
希ちゃんは俯きながら、振り絞るように謝る。
「今日はいいから、もう帰れ。家帰って反省しとけ」
疲れたようにそう言うと、課長は扉を顎でしゃくり出口へと誘った。
それを聞いた希ちゃんは、肩を落としてとぼとぼと素直に出口へと向かう。
課長の言葉が相当効けたらしい。
扉のハンドルに手を掛けた希ちゃんは、突然動きを止めた。
あれ、どうしたんだろう。
そう思ってると、
「すみませんでした…」
耳を澄まさないと聞こえないほどの小さな声で、振り返りもせずにそう言うとそのまま資料室を後にした。
あれは、反省しているのか?
ふたりきりになった資料室は、沈黙が走る。
どうしよう、とりあえずお礼を言わなくちゃ。
そう思って下を見ると、課長ははしごをかけ直してくれているところだった。
ああ、本当にいつも助けてもらってばかりだな。