どん底女と救世主。
番外編* 鬼も神に願う。
延々と続く人の波。
正月早々、何百メーターもの行列に並びなにが楽しいのかと毎年思っていたが、まさか自分もこの波に揉まれることになるとは。
去年の今頃は想像もしてなかった。
そもそも俺が何故得意でもない人混みの中、順番待ちをしているのかというと、隣で一緒に人混みに揉まれている彼女がどうしても『初詣』に行きたいと言ったからで。
近くの神社だと人に会いそうだとごねた彼女のため早朝から高速に乗り、隣の県まで遥々初詣に来た俺たちはかれこれ1時間近くこの行列に並んでいる。
車中で食べた、彼女が作った様々なおにぎりが今の俺たちの燃料だ。
定番である鮭や梅、焼き明太子からひじきご飯、卵焼きまでバラエティに富んでいてなかなか楽しかった。
彼女が作る料理は美味い。
レストランに出てくるような料理ではなく、食べるだけでほっとする、疲れが取れるようなそんな味だ。