どん底女と救世主。
そんな一躍人気者になった深山主任は、てっきり名古屋営業所でその牙を抜いてきたのかと思いきや、そんなこともなく。
「この資料、作ったのは君だな」
早速、新人の中田君が主任の餌食になっている。
「標題と結論がズレている。それから表記ゆれも多い。変換ミスも2つ見つけた。
どうしたらこんな資料が作れるんだ?」
「す、すみません!」
「俺が聞きたいのは謝罪じゃない。なぜこんなミスをしたかだ」
主任の説教スタイルはまだ変わってないみたいだな。
課長席に呼ばれた中田君は、かれこれ20分ほどアワアワと主任に対して言葉を探している様子。
一方、深山主任は黙ったまま仕事を進めている。
深山主任は、決して怒鳴りつけたりはしない。
だけど主任は、自分に納得のいく答えを出すまで決して離してくれない。
反省点、改善策をきちんと並べ立てられなければ何時間だって主任は答えを待ち続ける。
これが意外と、怒鳴られるよりも数倍辛い。
しかも反省点や改善策も主任の求める内容はレベルがとても高くて、ポッと思いついたようなことを並べても即却下だ。