どん底女と救世主。



ガタッ。


扱かれた過去を思い出し、その声で名前を呼ばれると私はどうしても跳ね上がってしまうらしい。


驚き過ぎて椅子を思い切り後ろに飛ばし、弾かれるように声の主の方へと身体を向けた。



「ちょっと来てくれ」



私を呼んだ張本人である深山主任は、課長席のすぐ隣にあるミーティングルームの扉に背中を預け、射抜くような鋭い視線で私を見ている。


その視線に、心臓が痛いほどに加速する。


どうしよう。いや、もうどうしようもないけれど。

上司に呼ばれたんだ、行かなきゃならない。

分かってる。分かってるんだけど、行きたくない。


でも、そんなことは言ってられないわけで。


上手く動かない足を引きずって、深山主任の後を追いミーティングルームに入った。



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