どん底女と救世主。
直属の上司なんだから、部下の人事査定なんか知っていて当然なのかもしれないけど。
だけど、深山主任がその話を知っているというのは何だかショックだ。
もしかして、今から説教が始まるの?
まずい、ちょっと耐えられそうにない….。
今から始まることに不安しかなくて、胃の痛みがより一層強まり始めたとき。
「この俺が直々に指導したというのに、一体なにをしでかしたんだ」
と、呟くように言った目の前の元教育係の表情は、本当に心配そうに眉間に皺を寄せていて。
あまつさえ、大丈夫かなんて聞いたこともないような優しい声色で言うもんだから、私の中の何かが弾け飛んでしまった。
「主にっ、ん…」
堰を切ったように流れ始めた涙は、頬を伝って膝の上へボトボトと落ち、お気に入りのベージュのスカートに大きなシミを作っていく。
目の前にいる深山主任の表情は涙で見えないけれど、おい、と焦ったような声を出しているので多分驚いているはず。
主任、困らせてすみません。早く泣き止みますから。
そう思うのに、今まで溜まりに溜まっていたらしい涙はなかなか引っ込んでくれない。
ていうか、なんで私は天敵であるはずのこの男の前で泣いてるんだ?
昔は、この男の前で泣くのが悔しくて堪らなくて散々涙を我慢したっていうのに、なぜだか今日に限ってはなかなか涙は止まってくれなかった。