どん底女と救世主。



「で?一体何がどうなったら、俺が居なかったたった数年の間に冴島に島への左遷なんて話が上がって来るんだ?」



温かいつゆだくのはんぺんとは対照的に、冷気さえ放ちそうな冷たい視線を私に遠慮なく送って来る深山主任は本題を切り出す。



あの後、ミーティングルームでまさかの号泣をしてしまった私は、なかなか泣き止むことが出来ずに就業時間を迎えてしまい、結局、主任とはきちんと話が出来なかったのだ。


『落ち着くまで居ろ』と、コーヒーを置いて一度ミーティングルームを出て行った深山主任も、就業時間を過ぎても出てこない私に心配したのか飽きれたのか。


こうして、美味しいおでん屋さんに誘って話を聞いてくれることになった。


のは、いいんだけど。


何から話そうか。

私もまだ頭の中ぐちゃぐちゃなんだけどな。


本当はこんなプライベートな話。しかも、社内の男と付き合ってて課内の後輩に寝取られました、なんて話したくない。


したくはないけど、言わないとしょうがない、よね。


観念した私は、頭の中で起きた出来事を整理しながら、トロトロに煮込まれた牛スジを堪能する主任に全てを話した。




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