どん底女と救世主。



もう二度と間違えないように、心の中で何度も唱えていたとき、


「まあ、人事の件は俺がなんとかしておく」


と、耳を疑うほどに有難いお言葉が聞こえた。


「え?本当ですか?」

「そんな無責任な嘘つくわけないだろ。
冴島に非がないことは分かった。
お前の上司として、不当な人事異動なんてさせない」


お猪口を置き、真っ直ぐと私を見据えながら言う深山主任、いや課長はなんて頼り甲斐のある上司なんだろう。

谷底に降り注いだ一筋の光に、なんだかもう涙が出そうだ。


「ありがとうございます、深山主任! 」

「だから、課長だと言ってるだろ?」


あ、やってしまった…。
折角、救いの手を差し伸べてくれたっていうのに。


「分かるか?深山課長だ。言ってみろ」


罪悪感と後悔に苛まれていると、子供に教えるように深山主任、いや課長が真剣な顔で訴える。


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