どん底女と救世主。



「深山主任、すみませんでした!」


勢いよく謝る。私に残された手段はこれだけだ、そう思い深く頭を下げた。


ああ、なんか懐かしいな。昔は何か失敗するたびにこの人にこうやって頭を下げたっけ。


そうこんな状況のなか思い出にふけっていた私の頭上に冷たい声が降ってくる。


「おい、また主任に戻ってるぞ。もしかして、そこらへんの記憶さえもないのか?」


しまった。


「いや、その記憶はしっかりあります。すみませんでした…課長」


もう恐れ多すぎて、消え入るような声しか出ない。
昨日散々言われたっていうのに、なんで私はまた主任なんて呼んでしまうの。


また頭を深々と下げながら猛烈に反省していると、それはまあいい、と意外にもあっさりお許しを貰えた。


けれど、


「お前な、男で失敗したばかりなのに気を抜きすぎじゃないのか。男と二人で飲みに行って酔っ払って寝るなんて何されても文句言えないぞ」


と、もっともすぎる説教にもう顔が上げられない。


「すみません…。ご迷惑おかけしました」


私が悪かったから、お願い許してください。
もう泣きそうだ。


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