どん底女と救世主。
「まあ、それももういい。取り敢えず座れ」
そう言って自分の座っているソファの机を挟んだ前を指す課長に足が震える。
え、まだ何か話があるの?
この空間から早く抜け出したいのに。
「いや、もう私は帰らさせていただきます」
「どこにだ?」
「え?」
「どこに帰る気だ」
まっすぐ私を射抜くような鋭い視線の課長の言葉にハッとさせられる。
そうだ、私にはもう帰る家なんてない。
「座れ」
有無を言わせない命令口調。
そんな課長に従うしか術がなく、そろそろと腰を下ろした。
わあ、このラグふかふかで肌触りがいいな。
なんて、現実逃避してる場合じゃないか。
目の前でガラステーブルに肘をつき、私をじっと見据える課長に恐怖しか抱けない。
また怒られるの?そう思って正座した膝の上の手に力を込めていると、
「お前、ここに住め」
冗談を言っているわけでもない、至極真面目な声で、とんでもない爆弾が投下された。