どん底女と救世主。



「一応私たち、男と女ですよ?」


今さっき、男の前で気を抜くなみたいな話してなかった?

急にこんなことを言い出した課長の真意が分からない。


そう思って聞いてみると、


「余ってる部屋があるから、困ってる部下に貸すだけだ」


と、課長は表情も変えずに淡々と答える。


「今から焦って部屋を探しても、即日入居可能で良い条件のマンションなんか見つからないだろう。それなら、ここで生活しながら良い物件を探せばいい」

「なるほど…」


確かにそうだ。部屋探しを舐めたらだめだ。

築年数は10年前後でそんなにお高くなく、駅から徒歩10分圏内で治安の良い立地。

なんて、好条件の揃う物件をこの短時間で見つけようとは思ってないけど、それなりに譲れない部分だってある。


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