どん底女と救世主。
それは、私が一番身を以て知っているはずだったこと。
まだ深山課長が深山主任だった頃、私が新人だった時代。
たまに取引先への土産のついでだとか言って、こっそりとスイーツを買ってきてくれることがあった。
しかも、並ばないと手に入らないとか、かなり値が張るものとか、自分では買えないようなものばかり。
最初は、優しいところもあるんだなんて思い感動していたけれど、段々気付く。
それは、残業の合図だって。
しかも差し入れまであるときは大概、日付けも超えて終電ぎりぎりまで。
今日の主任はなんだか優しいな、なんて思う日は莫大な量の仕事を振られたりとロクなことがなかった。
そんな恐ろしい過去を思い出している私に課長が出して来た条件は、意外なものだった。