どん底女と救世主。
「他の部屋はいいのか?」
そう課長に聞かれて、思わず眉間にしわが寄るのが分かる。
残るは寝室のみ。
それは私が今一番足を踏み入れたくない場所だった。
勝と愛を育んだ場所。そして、もしかしたら希ちゃんとも。
けれど、このマンションを一刻も早く出たい気持ちの方が勝って、思い切って寝室への扉を開ける。
ふたりで選んで買ったセミダブルのベットが中心に置いてあるこの部屋の空気が少し薄く感じるのは気のせいかな。
なんだか、息苦しい。
毛布とか枕とか私が買ったものも数多くあるけど、そういう寝具類はなんだか気持ち悪いので、もう置いておくことにする。
枕元の電気プラグに刺してあったスマートフォンの充電器だけは持って行こうと抜き取ったとき、隣に置いてあったライターが目に入ってしまった。