どん底女と救世主。
私が勝の誕生日にプレゼントしたブランド物のライター。
ローラータイプがいいと言う勝のために探したイギリス製のシルバーの四角をなんとなく持ち上げる。
すると、なぜか勝と過ごした日々が走馬灯のように頭に流れた。
なんで、いまごろ…。
今まで、裏切られて気持ち悪いとかそんな冷たい気持ちしか浮かばなかったのに。
なんで最後に今までのことなんて思い出すんだろう。
胸が苦しくなって、鼻の奥がツンとし出してしまったとき、
「いくら腹がたつからといって放火はやめとけよ」
「…しませんよ、そんなこと。」
いつの間にか寝室に入っていたらしい課長に真面目なトーンでそう言われ、反射的に胸のもやもやがすっ飛んだ。
放火なんてしませんよ。私をどんなやつだと思ってるんだ、課長は。
いまいち納得できずに、違うもやもやが胸を覆う。
でも、良かった。課長のおかげで泣かずに済んだから。