どん底女と救世主。
予想以上に荷物が多くなってしまったけれど、課長の大きな車には余裕で収まってしまった。
後ろのシートを倒せば、ソファくらいは乗るんじゃないだろうか。
そう思うほど大きな車を、器用に狭いコインパーキングから出す課長にお礼を言ったけど、ああ、といまいち感情の読めない返事しか返してくれない。
会社の女の子たちがこぞって座りたがるであろう、あの深山課長の車の助手席になぜか座っている私は、何食わぬ顔で運転するその横顔をそっと眺めた。
仕事には厳しいし、新人だろうが先輩だろうが容赦ないし、人使いも荒い。
はっきり言って、やっぱり鬼だ。
会話も素っ気ないし、傷ついていても優しい言葉をかけてくれるわけじゃない。
でも、もしかしたら課長はすごく優しい人なのかもしれない。
そう、ラジオのニュースだけが響く静かな車内で感じていた。