どん底女と救世主。
勝と約束をしたカフェは、勝のマンションの近く。
ふたりの休みが重なった日の朝ごはんの定番だった場所だ。顔見知りの店員さんが居るくらいには通っていた。
場所は勝が指定したわけだけど、正直、何だかなって感じだ。
ここ選ぶ?と思うのは、たぶん私だけじゃないはずだ。
まあ、勝にとっては家から近いし、行き慣れてるからって理由で選んだだけだろうけど。
そういうところがな、と苦い思いに浸っていると、知った顔の店員のおねえさんと目が合ってしまった。
「ご注文は何にされますか?」
「あ、えっと…。アイスコーヒーで」
「はい、アイスコーヒーですね。すぐお持ちします」
咄嗟にアイスコーヒーを頼んでしまったけど、10月の朝はなかなか冷え込む。
しまった、ホットコーヒーにしておけば良かった。
勝とよく来ていたとき、私は決まってミルクたっぷりのカフェオレを頼んでいた。
でも、今日はそんなの飲んでたら胸焼けしそうで。
それで慌てて注文したら、失敗した。
なんて、私、意外と緊張してるのかな。
割とすっきりとした気持ちで来たはずだったのに。