どん底女と救世主。
「どうだった?」
「へ?」
「昨日の宴会。例の製薬会社の創立記念パーティだったんでしょう?」
「ああ、それか…。うん、例年通り滞りなく終わったよ」
「そっか。良かった」
「次は50周年だから盛大に頼むって言われたよ」
「そうなんだ」
「ホットコーヒーになります」
会話が途切れたと同時にやって来た勝のホットコーヒーは湯気を上げていておいしそう。
またも笑顔で持ってきてくれたお姉さんは、このいつもと違う空気感に気づいているだろうか。
そんなことを考えていると、目の前に座っていた勝がようやくこの重くて仕方がない沈黙を破った。
「ごめん!」
お客さんが少ない早朝のカフェに勝の謝罪が響く。
がたっ、という頭を勢いよく下げたためにコーヒーカップが揺れた音も。