どん底女と救世主。
*
「ちょっとあんた、彼女居るなら姉である私に教えるのが筋なんじゃないの?」
リビングで私の淹れたコーヒーを啜りながらそう言うこの人は、そう、課長のお姉さん。
課長のお姉さんがこの部屋にたどり着くまでに、頭がショートして固まっていた私に『今から来るのは姉だ』と説明してくれた課長。
『彼女じゃなくて?』
と、恐る恐る聞くと、
『彼女は居ない』
とのこと。思わず安心してしまったけど、お姉さんの来訪も結構まずくない?
すでに私を彼女だと勘違いしてるみたいだし…。
「あ、あの私は彼女ではなく、」
「え、違うの?彼女じゃないの?」
慌てて誤解を解こうとすると、目を見開いて食い気味に返してくるお姉さん。
確かに、こんな休日の午前中に弟の家に居る女なんて、彼女以外の何者でもない。普通は。
でも今、私は普通の状態じゃないんです、お姉さん。
これは勝との顛末をまた話さないといけないかなと、心の中で大きなため息を吐いたとき。
課長が二度目の爆弾を落とす。
「いや、彼女だけど」