あの双子に恋しては、いけない
「大丈夫?」

 とっても、低くて唸るような声。

 かっこよくて、クラクラしそうで。

「は、はい。大丈夫です」

 緊張しながらも奈々は、無事を伝え会釈をした。

「良かった」

 ニコッと笑い、その男子生徒は、トロフィーを元の位置に戻した。

「ここ、危ないよね。俺も前、ここで落としかけたんだ。トロフィー」
「そ、そうですよね」

 声が震えているのが自分でも分かった。

「じゃ」

 軽く手を挙げ、男子生徒は奈々に背を向けた。

「ま、まって」
「ん?」
「名前は、名前なんて言うんですか?」
「島野。島野春」

 背を向けたまま名前を伝えると島野くんは、去っていった。

 その小脇に大事そうに抱えられていた、一冊の本を奈々は見逃さなかった。

「三國志、好きなのかな?」

 って!早く教室に戻らないと、香が待ってる!
< 5 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop